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キラキラ 174

 奈月はいったん朗読を休止して、「切ないなぁ」と漏らした。「自分なんかがこの人を好きになってもいいんだろうかって疑問を感じる瞬間ですよ。1度でもその人に愛されると、どうしようもない深みにはまっちゃって、罪の意識にさいなまれるんでしょうね。世の中には、そんな恋に苦しんでる人って、けっこういると思いますよ」
 奈月の分析に、僕は「かもな」とだけ答えた。
 それから奈月はゆっくりと視線をしおりに落とし、さっきよりも低い声で続きを読み始めた。
「・・・一方、明石の君からの手紙を受け取った光源氏も、思い悩んでいた。まさかここで彼女と再会するとは夢にも思わなかったのだ。明石の君の心中を察するといてもたってもいられなくなり、今すぐにでも会いたいという衝動に駆られた。住吉大社への参詣を終えて京に帰る途中も、従者たちが楽しい管弦の遊びをする中で、源氏だけは明石の君のことが心に引っ掛かっていた。
 明石の君の方も、あくる日に改めて住吉に参詣したが、その間ずっと物思いが募り、自らの情けなさを思って嘆き続けた。明石に帰っても悩みは深くなるばかりだった。
 光源氏は何度も上京を促してきたが、決して応じる気にはなれない。身分の違いがどうしても頭から離れず、自分のような田舎者が京都に上がったとして、世間の物笑いの種になるだけだと恐れるばかりだった。このあたり、やはり六条御息所に通じるところがある。御息所もまた、葵祭での光源氏の行列を目の当たりにして屈辱的な思いをさせられ、自分の恋が世間の『人笑へ』になることだけは避けようと激しい葛藤と闘い続けた。
 とはいえ、明石の君には御息所とは違う悩みがあった。姫君のことだ。この子を田舎で育てることによって、世間から人並みに扱ってもらえなくなるのではなかろうかと危惧したのだ。姫君のことを考えると、明石の君の心は揺れ動いた」
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