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キラキラ 177

「はい。っていうのも、この場所からほんの少し離れたところに、光源氏が御堂を造営中だったんです。じつは、大堰は、洛中に住む光源氏にとっても、けっこうなじみがあったわけです」
「なるほどね。つまり源氏にしても、妻である紫の上に嵐山へ向かう口実ができたわけだ」
 僕がそう言うと、奈月は「ですね」と軽やかに応えた。
「もっとも、これも全くの偶然っていうわけじゃないんです」
「わかった。明石の入道の頭の中には、ちゃんとそのことが入ってたんだ。娘を住ませるのに、いきなり都のど真ん中にもっていくよりは、光源氏の御堂の近くの方がいろんな意味で都合がいい。そう踏んだんだな」
「その通りです。でも、たまたま大堰に土地があったというのは、偶然ですよ。この辺りは、平安時代では一等地とまではいかないまでも、相当な価値はあったはずですから。そこに手つかずの土地があって、知人が領有している。こんな美味しい話、ありえないですよ」
 僕は「これも住吉の神の導きっぽいな」と言った。奈月は「かもしれませんね」と応えた。
 それから彼女はすっと立ち上がり、しおりを椅子の上に置いてから、僕の隣に来て窓の外を眺めた。
「光源氏が造った御堂は、まさににあの辺にあったとされるんですよ。今は清涼寺っていう、大きなお寺になってます」と奈月は窓の外に向けて指さした。「その清涼寺の少し手前には、野宮神社があります。源氏と六条御息所との別れの舞台ですね」
 ぼんぼりのような嵐山の街の明かりの奥には、濃紺の空間が続いている。そういえば、東山は京都に来ると仏教的な迫力を感じるのだと奈月によく話していたらしい。こうやって嵐山の夜を覗き込んでいると、僕もその闇の中に静かな迫力を感じる。何だか不吉な迫力のような気がした。
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