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キラキラ 178

 僕の横で奈月はぼんやりと窓の外を眺めている。ふと手前に目を遣ると、僕と奈月の姿が窓ガラスに映っている。さっき新幹線の中でも感じたことだが、こうして2人の姿を客観的に眺めてみると、僕たちはただの先輩と後輩の仲には見えない。そもそも、過去から未来へと永遠に流れ続ける時間の中で、こうして奈月と2人きりでガラスに映っていること自体が、僕にとってはミラクルに感じられる。
 ガラスの中の奈月は物憂げな表情を浮かべている。瞳のすぐ下は幽玄に照らし出された渡月橋が横切っている。すると彼女は肩で息を吐き出した。どうかしたのかと聞いても返事はない。奈月はただ漠然と窓の外を眺めているだけだ。
 しばらく経ってから奈月はこうつぶやいた。
「何だか、私が私じゃないみたいです」
「またそんなことを言う。大丈夫だよ、どこからどう見ても、奈月は奈月だよ」と僕はささやいた。
 だが彼女は首を振り、「いや、私はいったい誰なのか、分からないです」と哀感を込めて畳みかけた。「私は、六条御息所なんじゃないかって、すごく思います」
「六条御息所?」
「あぁ、やっぱり、私、頭がおかしいです。私は一体誰なんですかね?」
 奈月は両方の手で頬を押さえながら、泣き出しそうな声を震わせた。
「酔っちゃったんだよ」と僕は言った。すると彼女は頬に手をやったままもう一度首を振り、「酔ってなんかないです。最近になって、私、よくこんなふうになるんです。特に夜になると、いろいろと考えちゃって、頭がゴチャゴチャになっちゃうんです」と訴えてきた。
 僕は奈月をただ見守るだけで、他には何もできなかった。それよりなぜ、奈月が六条御息所にこだわるのかがどうしても呑み込めなかった。
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Author:スリーアローズ
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