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キラキラ 179

「私、大丈夫なんですかね? この先まともな人生送れるんでしょうか?」
 奈月はそう問いかけてきた。だが、声はさっきほど震えていない。取り乱している自分を傍観するかのような冷静な口調になっている。
「べつに後悔してるわけじゃないんです」と奈月はうつむいていた顔を上げた。窓ガラスに映る表情には自嘲の色がにじんでいる。
「後悔してるわけじゃなくって、追い詰められてるんです」と奈月は少し声を大きくした。「人生って、なんで一度きりなんですかね? この人生が終わったら、どうなっちゃうんですかね。私は、また私として生まれ変わることができるんでしょうか?」
 そう言って奈月は横目で僕を見た。彼女の目の下を横切っていた渡月橋が耳の方にずれた。
「奈月は、今の自分が好きなんだな」と僕は言った。すると彼女は「自分のことが好きなんじゃなくて、私の周りにいる人たちが好きなんです」とすぐに返してきた。
「私って、なんだかんだ言って、周りの人たちにすごく助けられてここまで生きてきたんです。お父さんとお母さんはもちろんですけど、お姉ちゃんにしても、弟にしても、みんな私を支えてくれた。それから、友達も、職場の同僚も、困った時には相談に乗ってくれたり、アドバイスしてくれたり。私、その人たちの期待を裏切りたくない一心で、とにかく一生懸命にやってきたんです」
 奈月はそう言い、大きく息を吐いた。その瞬間、ヘアリンスの香りがふわっと広がった。
「すごくいいと思うよ。そんな生き方。いかにも奈月らしい」と僕は返した。
「でも、いくら大好きな人たちに恵まれたって、死んだら終わりじゃないですか。私、今人生のターニングポイントに立ってるから、余計にそんなことを考えるんです。私にとっての1つの時代が終わって、私の周りから人どんどん離れてゆくようで、それがたまらなく哀しいんです」
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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