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キラキラ 189

「先輩・・・」
 それは幻聴を聞いたのかと思って返事をためらうほどにか弱い声だった。奈月の声が耳の奥に落ちた時、うとうとしかけていた僕の目は、再び暗闇に包まれた部屋の中を捉えた。
「たとえば東山君のことなんですけど」と奈月は続けた。「今回の旅で、なんだかいろいろと考えちゃうんですよね」
 奈月は依然として天井を見上げている。まるでそこに東山との想い出が映し出されているかのようだ。
「あの人、ほんとに、1週間前に明石に行ったんですかね?」
「分からんね」と僕は答えた。明石から京都へ向かう時の奈月の落胆ぶりを思い起こすと、あえて東山の話はしない方が彼女のためだと思った。
「私は間違いないと思いますね」と奈月は小声で断言し、額にかかった髪をかき分けた。いくら窓を開けているとはいえ、真夏の夜だ。僕も奈月も汗ばんでいる。
「さっきの無量光寺のお坊さんの話からすると、訪れたのはまず東山君だと思いますね。それに、虫の知らせって言うんでしょうか、第6感も訴えてくるんです」
「だとすれば、すごい偶然だな」と僕は答えた。
「でも、新幹線の中でも話しましたよね。いかにも偶然に見えても、じつは人生の中に予め組み込まれていたことなんじゃないかって」
 後ろの山の方で、何か獣の鳴く声が夜空に響いた。鳥の声のようにも聞こえたが、それにしては野太いように思えた。その音が消え去ると同時に奈月は言った。
「そう考えると、無量光寺に東山君が1週間前に奥さんたちと訪れて、それをさっきたまたま出てきたお坊さんが教えてくれたっていうのは、なにかのお告げのような気がするんですよ」
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