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キラキラ 195

 そう言った後で、突然頭の中がふわふわと揺れだした。外から入ってくる風に、幸恵の影が立ち現れたのだ。もうとっくに過ぎ去ってしまったはずなのに、じつはまだ近くにいるんだなと思った。
 前回の旅で、幸恵のことを考えながら嵐山の街を歩いた記憶をたどると、街の賑わいを具体的に思い起こすことができない。残っているのは、地面の光景だ。コンクリートで塗り固められた地面に小石や砂や紙くずが散らばり、時折僕の影がその上にかぶさる。つまり僕は終始うつむいて歩いていたわけだ。
 もちろん、幸恵と2人で街を歩いたこともないわけではない。だが彼女は外へ出ると決まってサングラスをかけ帽子を深くかぶり、それから無口にもなった。それが、神戸のルミナリエに行った時だけは例外的にはしゃいでいた。光でできた金平糖のようなイルミネーションが彼女の身体に降り注ぎ、僕は夢を見ているような気分になった。    
 その夜、僕たちはポートアイランドが一望できるホテルのバーで酒を交わした。僕はカクテルを、幸恵はワインを飲んだ。どんな話をしたかは詳しくは思い出せないが、主に幸恵の話を僕が聴くという形だった。あの時幸恵は「魅力的な男性」について、こんなことを語っていた。
「誰もが持っていないような特別なものを持つ人って、逆に、誰もが持っているありふれたものを持っていないのよね」
 僕がそのことについて考えていると、幸恵は「特別な才能っていうのは、何かの欠落と引き替えに備わってるものなのね、きっと。人間って、そうやってバランスを取らされているのよ」と言った。あの時彼女は、ワインと同じ色のピアスをぶら下げていた。よく似合っていると僕は思っていた。
「つまり、魅力的な男の人って、必ず欠落を抱えてる」
 幸恵はどこか誇らしげにそう繰り返し、ワインを口にした。その男の人がいったい誰のことなのかは今でも謎だが、東山を思う時、あいつもそういうものを抱えていたのではないかと振り返る。
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Author:スリーアローズ
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