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キラキラ 197

 奈月の濡れた舌は僕の唇の間にするりと入り込み、口の中を縦横無尽に這い回った。状況がうまく呑み込めない僕は、ただ流れに任せるしかなかった。その時聞こえたのは、レンガの城が崩れてゆく音だった。それは、これまで築き上げてきた奈月との関係が瓦解してゆく音だった。僕は寂しさを覚えた。
 奈月はまもなくして舌を引っ込め、唇を離した。そうして、「すみません、先輩、どうしても我慢できなくなっちゃって」と素直に謝罪してきた。その言葉で僕は少しだけ安心した。
「私、いろんなことを考えるんです」と奈月は、何事もなかったかのように、落ち着き払った口調で話し始めた。今起こった出来事は、もしかして僕の錯覚だったのではないかと思うほどだった。それで僕はまだ口の中に残っている奈月の熱をたしかめた。
「これまでの人生、間違いだったんじゃないかって、ちょっと後悔してるんです」と奈月は言った。
「後悔だなんて、奈月らしくないね」と僕は応えた。
「私、田舎者だから、妙に素直なところがあるんですよね。小さい頃の経験が今に影響してる気がするんです」
 奈月はそう言って、僕の二の腕の上で頭の位置を整えた。
「中学生の時に、大好きだった先生がいたんです。体育の担当だったんだけど、若くて、情熱的で、存在感の大きい人だったんです。もちろんスポーツは何でもできて、私、密かに憧れてました」と奈月は話した。スポーツのできる男は女の子にとって魅力的に映るのだろう。
「で、上級生になったら私は生徒会の役員になりたいって思ったんです。というのも、先生は生徒会の担当でもあったんです。それまで先生のこと遠くから眺めてるだけだったんで、生徒会に入ることで先生に近づけるんじゃないかって本気で思いました。誰にも言わなかったですけどね」
 いつの間にか、風はぴたりと止んでいる。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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それも
とびっきり寂しい旅に・・・

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