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キラキラ 199

 奈月の訴えを聞いているうちに、僕の中で言葉が消滅していった。そうしてただ1つ「自己犠牲」という言葉だけが残った。それは「犠牲」の2文字が入っているものの、決してけがれているわけではなく、美しい精神だ。にもかかわらず、この言葉にはどこか皮肉の色が漂う。奈月は自己犠牲のもとに生きてきたことを僕は痛いほどよく知っている。
「東山君と一緒にいた時も、ずっと先生の言葉を引きずってたんです」と奈月は話を進めた。
「彼に楽しい思いをさせたいとか、不自由な思いをさせないようにとか、そんなことばかり考えてましたもん。『付き合う』ってことは友達の関係よりも高尚なんだって、信じ切ってましたね。今振り返ってみると、ただの自己満足だったなあっていう気もしますが、あの時はそんな不自然でもなかったし、東山君にも変なプレッシャーを与えたっていうわけでもなかったと思うんですよ」
「奈月は、じつは尽くすタイプの女の子だからね。東山を喜ばせようとすることは、自然な心から出たものだったんだよ」と僕は言った。
 すると奈月は「そうですか? 私、尽くすタイプですかね?」と静かに言ってきた。どこかうれしそうだった。しかし次の瞬間、その言葉はため息に変わり、重い口調になった。
「そんな人生が急変しちゃったのは、やっぱりお父さんの病気だったんですよ。あれほど元気で、超合金みたいな人が突然倒れちゃったんですから。現実として受け止められなかったです。最初はお母さんが介護することになったんですが、あの時まだ高校生の弟がいたじゃないですか。家のことしなけりゃいけないし、仕事を辞めるわけにもいかない。それにおばあちゃんも特養に入ってたから、お母さん1人じゃ無理だったんです。1番上のお姉ちゃんはツアコンとして世界を飛び回る仕事を辞めなかったし、2番目のお姉ちゃんは結婚したばかりで横浜に住んでましたし。結局お母さんのお手伝いをするのは私しかいなかったんです」 
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Author:スリーアローズ
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