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キラキラ 202

 いつのまにか奈月のつま先が僕のふくらはぎに軽く触れている。口の中に残っていた熱はだいぶ冷め、再び彼女を妹のように感じ始めている。この距離感こそが、僕たちの自然な関係なのだ。
「そうやって大学時代のことを振り返っていると、私は、私の人生を生きてこなかったんじゃないかって思えて仕方ないんですよね。やっぱり私、頭おかしいんですかね?」
「だけどさ、いい人に出会えてもうじき結婚するわけだから、それはそれでよかったじゃないか」
 僕がそう返した途端、彼女は動きをぴたりと止め、身体を硬直させた。それから「まぁ、そうですけど」と声をフェードアウトさせた。
「これまで人に尽くしてきた分、奈月は幸せになれる権利があると俺は思うね。人生って、そういうふうにバランスが取れているんだよ、きっと。完全に不幸な人はいないし、逆に完全に幸福な人もいない」
「そうですかね? 不幸のどん底を経験して死んでいく人って、たくさんいると思いますけど」
 奈月は再び目を覚ましたかのように、はっきりとした声を出した。
「不幸がどうかを計るものさしって、その人の感じ方だと思うんだ。たとえば、お金がなくても心が豊かな人はいる。結局は、心のもちようなんじゃないかな」
 それについて奈月は何も言わなかった。僕もなにやら見当違いのことを言ったような気になった。僕はただ、奈月を勇気づけようと思ってそんなことを言いだしたのだ。 
 経済的な豊かさは精神的な豊かさにつながる。過去に幸恵を見ていて、じつはそう思っていた。だが、こうも思う。幸恵はほんとうに幸福だったのかと。もし彼女が完全に満たされていたならば、リスクを背負ってまでも、僕と旅行に行っただろうか?  さらにこうも思う。僕は幸恵によって、どん底まで苦しんだ。彼女もいずれはそれ相応の苦しみを味わうに違いないと。
「一見、幸福に見える人こそ、何か闇を抱え込んでいるもんだよ」と僕は自信をもってそう言った。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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