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キラキラ 203

「先輩の言うことは、頭では分かりますけど、実感はできないです。一般論っていうか、理想論っていうか、とにかくそんな感じがするんです。たしかに、世の中って、そうやってバランスが取られるものかもしれませんが、やっぱりずっと不幸な人はいますよ。心のもちようだけでは、どうすることもできない問題って、たくさんあると思いますよ」
 奈月はそう返してきた。もちろん彼女が言うことも1つの側面だ。世の中に立ち現れる諸相は、きわめて複雑なのだ。だが僕は、その複雑さの中にもバランスがあると思っている。極論を言えば、すべての問題は時間によって解決される。永遠に続く問題などありえない。
 とはいえ、そのことを口に出さない。これが奈月と話をする時の僕の流儀だ。今、極論を述べたところで、当事者として思い悩んでいる奈月の腹には落ちない。それで僕は、「大丈夫だよ、奈月」とだけ言った。すると、予想通り、彼女は何も返してこなかった。
 こういう時に、奈月の心に届くのはポジティヴなメッセージだ。どんなに苦しい出来事でも、それを客観的な事実として捉えることができれば前向きになれる。起こった現実に対してどう対処すればいいかを考えることで、悩みの部分は減る。特に奈月は、「苦しみを乗り越えるからこそやさしい人間になれる」と捉えることができる女性だ。
「きっと奈月は、今の彼氏と出会うべくして出会ったんだ」と僕は言った。「さっき奈月は『縁』がないと嘆いてたけど、俺は逆だと思う。朝、列車の中で、婚約者のことを誠実だと言ったじゃないか。東山と比較するのはナンセンスだ。でも、きっと、あいつと結婚するよりも幸せになれると思うね。奈月には、幸せになる権利がある。つまり、『縁』があったんだ」
 ところが、力を込めてそう言ったつもりだったのに、奈月は相変わらずげんなりしている。しかも「先輩には私の心の深いところまでは分かってもらえないんですよ」とさっきと同じため息までついた。
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Author:スリーアローズ
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