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キラキラ 207

 僕はもう一度、今度は瞳を凝らして奈月の背中を見た。何かの間違いじゃないかと思ったのだ。
 すると、奈月は少しだけ顔をこちらに傾けて、「だめですか?」と確認してきた。それを聞いて僕は、今の「ダイテモラエマセンカ」という言葉が決して聞き違いではないことを納得した。
「奈月は、いったい、何を言ってるのだろう?」と僕は返した。それが精一杯だった。
 奈月は身体を完全に僕の方に向けた。その瞬間、部屋に差し込む月明かりがわずかばかり揺らめいた。
「私、今日、先輩に抱いてもらうためにここへ来たんです」と彼女は言った。
「抱くのは簡単だよ」と僕は返した。「でも、奈月は、それでいいの?」
 月明かりを背に受けているために奈月の表情は濃紺に染め抜かれている。だが、彼女がずいぶんと落ち着いていることは全体から伝わってくる。
「だめですか?」
「何が何だか、よくわからないよ」と僕は思ったことをそのまま言葉にした。
「どうか、深く考えないでください。今も言いましたけど、私、先輩に抱いてもらいたいだけなんです。こう見えても、ずっと悩んでたんですよ。いつから悩んでたのか思い出せないくらい、ずっと悩んでたんです。で、思い切って先輩と旅行することになって、今日はずっと一緒にいれて、すっごく楽しくて、夢みたいで、それでも、その途中で何度も悩んでたんです」
「全く気づかなかった」と僕は漏らした。  
「そうやって、ずっと悩みましたけど、やっぱり私は先輩に抱いてもらいたいです。それって、たぶん、私が前世から願い続けてたことじゃないかと思うんです。だから、どうしても止めることができないんです」と奈月は声を大きくした。
 その声は恐ろしいほどまっすぐに僕の耳に届いた。
 それから彼女は、膝をついたまま僕の方にすり寄ってきた。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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