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キラキラ 218

「奈月がいったい何を言ってるのか、とにかく俺には分からない」と僕は首を振りながら言った。彼女は不思議な顔をしてこっちを見ている。まるで、おかしなことを言っているのは僕の方だといわんばかりだ。
「俺より先に、しかも黙って佐賀に帰るっていうのは、いくらなんでも、あんまりじゃないか?」
「でも、私、昨日、そう言いましたよね」と奈月は答えたが、僕にはそんな話を聞いた覚えが全くない。というより、さっきまでの奈月とはまるで別人格を宿らせたこの女性は、本当に奈月だろうか?
 すると彼女は冷淡さすら漂わせながら鏡の方を向き、髪のセットを再開した。僕はただ茫然とその姿を眺めるしかなかった。いったい、何がどうなっているというのだろう?
 やがて奈月は髪から手を放し、最後にヘアスプレーをさっと振りかけた。フローラル系の香りがふわっと広がり、まだ半分眠っている鼻の奥にも届いてきた。
「先輩」と奈月は鏡を見たまま話しかけてきた。僕は何も言わずに彼女の方を見た。「どうしても行きたいところがあるんです、先輩と」
「今から?」
「はい。できれば今からです。朝一の新幹線が出る前に、そこに行っときたいんです」と奈月は言った。
「もちろん構わないけど、あまりに早すぎないか? まだ夜も明けていない」
 僕がそう返すと、奈月は何の迷いもなく「できれば夜が明けないうちに行っときたいんです」と言った。僕には全く意味が分からなかった。
「で、どこへ行くの?」と聞くと、奈月は化粧ポーチに道具をしまいながら、「嵐山の町を歩きたいんです」と返した。ますます意味が分からなくなっているところに、「東山君と2人で歩いたところを、先輩と一緒に歩きたいんです。だめですか?」と奈月は言い、ガラス玉のような瞳を僕に向けた。
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Author:スリーアローズ
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