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キラキラ 222

「さっきビールを飲んだ後で、ヘンな感覚にとらわれたんだ」と僕は切り出した。「ここの桜が、たしかに松の木に見えたんだ。しかも、それを教えてくれたのは奈月だった」
 僕がそう言っても、彼女はべつだん大した反応をせず、「うとうとして、夢を見てたんでしょう」という素っ気ない言葉だけ返ってきた。
「それが、夢とは思えないくらいに現実的なんだよ」
 僕が声を大きくしても、奈月はやはり平然とした様子で「夢と現実って、考えようによっては、どっちが夢で、どっちが現実なのか、わからなくなることってないですか?」と問い返してきた。
「たとえそういう感覚になったとしても、それは瞬間的なことだよ。現実は現実だ」
「そうですかね。今が夢じゃないかっていう感覚から抜け出せないことはないですか? それはたとえば、試験に合格したとかの特別な瞬間じゃなくて、ふとした時に、私なんかだったら普通に歩いている時とか、教壇に立って小学生の前で授業をしている時とか、ありふれた時間の中にそんな感覚がふっと入ってくるんです。今私は本当にここに立っているんだろうか? 今の私はただ今を生きてると思い込んでるだけの人形みたいなもので、現実の自分はどこか他の場所いるんじゃないかって」
 僕たちの前には渡月橋が現れた。すると、後ろの山で、何かの獣の鳴く声がした。ホテルの部屋で聞いたのと同じ鳴き声だった。
「それとは逆に、おそろしく現実的な夢だってありますよ。たとえば私、予知夢みたいなものをよく見るんです。私、あれほど先輩に応援してもらったのに、結局小学校の教員試験を断念したでしょ。もちろん、いろんな要因が絡んでるんですけど、じつはあの頃見た夢の影響もあるです。子どもたちのためにと必死になって働いて、疲れ果てている私の姿がそこにあったんです。あぁ、この仕事は本当にやりがいがあるけど、私みたいな人間がすると、こんなにボロボロになるんだって、怖くなりました」
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Author:スリーアローズ
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