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キラキラ 223

 渡月橋を歩いているうちに、大堰川を吹き抜ける風が僕の前髪を揺らした。さっきホテルの部屋の窓から流れ込んできた風だ。今隣を歩いているのが、数時間前まで裸のまま抱き合っていた女の子だとはどうもうまく信じられない。もしかすると、あれもおそろしく現実的な夢だったというのだろうか?
「教師って、物事を上手に割り切ることができる人がなるべきだって、私、夢を見てそんなことまで思い始めたんです。で、それから、周りの先生方をやたらと観察をするようになりました。これじゃいけないなって、ずっと思ってたんですけど、どうしてもしてしまうんです」
 奈月はそう言った後で、ふっと我に戻ったような仕草を見せ「ごめんなさい。教員試験を断念した人間がそんなこと言うべきじゃなかったですね」と謝ってきた。
「いいよ。何でも思ったことを素直に口にする場が必要なんだ、人間には」と僕は寄り添った。 
 橋を進めば進むほど、嵐山の街灯が近づいてくる。街はまだ眠ったままだ。背後の山々は漆黒の色をしみこませて座り込んでいる。
「東山君とのことだってそうなんですよ」と奈月はだしぬけ気味に口を開いた。
「私、何度か彼の夢を見たんです。夢の中で私は一度たりとも東山君と結ばれなかった。あるときは冷たく私の手をふりほどき、ある時は殴りかかってきました。全身が血まみれになるくらいに。彼は常に隠し事を抱えてるんです。彼が何を隠しているのか、簡単に分かりそうで、じつは絶対に分からないんです。私が追求しようとすればするほど、彼はいらだち、事実は遠ざかってゆくんです。そのうち私は、夢の中で疲れ果ててしまいました」
 僕もさっき奈月を抱きながら、過去に彼女と抱き合った記憶を追いかけた。そこには僕と奈月の正しい関係を示唆する重要なヒントが隠されているような匂いがしたのだ。だがそのうち僕は深い眠りに墜ちてしまった。
「だから、東山君と別れたのにも、夢が絡んでたんです。おそろしく現実的な夢ですよ」
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Author:スリーアローズ
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