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キラキラ 224

「でも、もう東山君のことは、どうでもいいんです。先輩との共通の知人だからどうしても話題に上るけど、正直、それ以上の思い入れはないです。1週間前にあの人が明石に行ったというのも、結局は、彼とは縁がなかったということのあらわれです。結ばれそうで、結ばれない。そんな人って、もしかしたら、人生の中にはいるのかもしれません」
 奈月はさっきまでよりも冷淡な口調でそう言った。気がつけば、僕たちは渡月橋を渡り切り、眠ったままの嵐山の街へ出た。前に来た時にソフトクリームを買った店のある商店街も、暗がりの中にシャッターが下りていて、まるで映画のセットのような雰囲気だ。映画のタイトルは『暗がりの街』だ。いや『死んだ街』、それとも『夢の中の廃墟』かもしれない。
「つまりは、ホテルの部屋の窓から見えた松の木も、現実的な夢だったというわけだ」と僕は奈月の横顔に向かって言った。すると彼女は「それは分かりませんよ」と答えた。「ただ、私が言ってるのは、夢と現実の区別をつけるのが難しい時もあるっていうことです。そうして、私の場合は、そういう経験が、人生の選択を迫られた時にけっこう影響してるってことなんです」
 それから彼女はしばらく考え事をした後で、「私の心の中にあるのは、諦めることのできないことばかりです。でも、すごく悩んでいるのに、夢にも出ないようなことだってありますよね」と続けた。その時、商店街の屋根の間から、満月がはっきりと顔をのぞかせた。
「割り切ることのできない人、割り切ることのできない過去。それは決して夢じゃなく、正真正銘、今の私が抱える闇なんです。須磨で光源氏の枕元に現れた桐壺院のように、夢で解決のヒントを告げてくれたら、どんなにか楽だろうに」と奈月は小さく言った。
 目の前には「野宮神社」と記された看板が外灯に照らされている。
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Author:スリーアローズ
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