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キラキラ 226

「なるほど」と僕は言った。しかし奈月は、僕が「ど」を言い終えないうちに次を話し始めた。
「つまり明石の君は、光源氏と縁があったんですね。さっきから先輩が言ってるように、彼女の人生は、思い通りにならないようで、じつは思い通りになったんです」
 僕は一呼吸置いてから「ということは、明石の君は、明石の入道の念願通りに、めでたく光源氏の妻となったわけだ」と言った。
 すると奈月は「都に戻った光源氏には、輝かしい生活が待っていました。政治的地位もぐんと上がり、離れていた人たちも一気に近づきました。流離の苦しみを乗り越えた光源氏は、名実ともに栄華を極めたのです」と、やはりNHKのナレーターのように解説を続けた。
「それで、源氏は、過去に六条御息所の住んでいた辺りの広大な敷地に『六条院』という理想郷を構え、そこに春夏秋冬の町を作るんです。『春の町』は源氏が住むべき所で、正妻である紫の上と一緒に暮らします。『夏の町』は昔の恋人である花散里が住み、『秋の町』には秋好中宮(あきこのむちゅうぐう)が住みました。秋好中宮とは、伊勢神宮に仕えた前の斎宮で、六条御息所の娘です」
「六条御息所」と僕は思わず口走った。すると奈月はかすかな反応をしたようだった。だが、その反応は、またしても暗闇に包み消されてしまった。
「明石の君が移り住んだのは、その六条院の中の『冬の町』でした」
 奈月は結論づけるように静かにそう言った。僕には、何となく、明石の君と『冬の町』が結びつかないでいた。降り注ぐ太陽、磯の香り、クマゼミの鳴き声。明石という場所は、やはり夏が似合う。
「たしかに、明石の君にとって、光源氏が愛する他の女性たちと同じ敷地内に住むということは、一概には幸せだとは言えませんでした。それでも、離れた場所でひたすら待ちわびる苦しみを思えば、源氏がすぐ近くにいるということは、せめてもの救いだったわけです」
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