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キラキラ 227

 ちょうどその時、僕たちの目の前に野宮神社への入口を示す看板が現れた。奈月は一切躊躇することなく、看板の示す小道へと入っていった。まるで、この辺りの地図を知り尽くしているかのような動きだ。僕も黙って彼女の後をついて行った。
 すると、もしかするとそれは僕の気のせいかもしれないが、辺りの空気が重く、冷たくなったような気がした。夜明け前の嵐山の街も静まりかえっていたが、この小道に入った途端、静寂の質が変わったように思えた。恐怖さえ感じるほどだった。
 野宮神社へと続く道は、ほんの100メートル足らずと見えるが、その間に外灯は2つしかなく、足下は暗く心許ない。道の両側には竹林が続いているらしい。それもただの竹林ではない。深くて背の高い竹林だ。2つしかない外灯が、その竹林の様子をおぼろげながらに照らし出している。
 奈月は僕を尻目にかけるかのようにまっすぐに進んでいる。時折大きく空気を吸い込むようにしながら、ゆったりと歩いている。つい今まで、ナレーターのような口調で明石の君にまつわる物語を解説していた時とはまた別の魂が宿っているかのように、奈月は落ち着いている。だが、その落ち着きは、僕の心を決して落ち着かせない。2人でビールを飲み交わす前までは、僕は奈月の心と重なり合っているという手応えを得ていた。だが、今の彼女は何を感じているのか全く想像できない。彼女の落ち着きは、だからますます僕を混乱させた。
 すると、少し前を歩く奈月が、まっすぐ前を向いたまま口を開いた。
「竹たちが何かを語りかけてくるみたいです」
 その言葉を聞いて、僕はヒヤッとした。同じようなことを感じているからだ。
「ちょっと、怖いな」と僕は感じることを言葉にした。すると奈月はこう応えた。
「普段は目に見えないものの声が、ここでは聞こえるからですよ」
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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