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キラキラ 232

「私は、この野宮に来て、魂の声を聞きました。それは、まさしく、本当の私の声でした。そして、その声を聞いた瞬間、心から悲しくなりました。竹林の道で、胸の1点に刺さった痛みが、徐々に広がってゆくのが自分でも分かりました」
 奈月はそう言って、境内の奥に広がる森の方に目をやった。
「あの日、礼拝を終えた後、私と東山君は神社の中を歩き回りました。彼は自分の好きな六条御息所にゆかりの深い場所とあって、すごく興奮していました。写真を撮ったり、私に『源氏物語』の説明をしたり。野宮は、光源氏と御息所が1年と半年ぶりに再会した場所なのだ。源氏がやっと訪ねてきてきれて、御息所は、内心では胸が破裂しそうなほどうれしかった。でも、それを素直に表現するほど彼女は子供ではなかったし、何より長らく無沙汰であったことの憤りもあって、簡単に心を許さなかった。源氏の方も、その空気を察して、一気に詰め寄ることはしなかった。それで彼は、境内の榊(サカキ)の枝を折り、そっと御息所に差し出した。御息所は、源氏に対してこう返した

 神垣は しるしの杉も なきものを いかにまがへて 折れるさかきぞ

 あなたの折ったその神聖な榊の枝は、私に対してなのですか? 何かの間違いじゃないのですか? あなたには他に愛する方がいらっしゃるのでしょう?」
 奈月はそこまで話してから、不意に歩き始めた。僕は彼女について行った。2人の足音が静寂を刻む。
「御息所のつれない態度に、源氏は必死になって彼女への変わらぬ思いを語った。その思いを口にした途端、源氏はさらに本気になってきた。御息所に会いに来なかったことを悔やみ始めるほどだった」と奈月は続けた。そうして、奥の院の手前で足を止め、そこに茂っている木の枝を折り、香りをかいだ。
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