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キラキラ 233

「それは?」と聞くと、奈月は「榊です」と答えた。そうして、今手に取ったばかりの枝を、暗闇に透かすようにいとおしげに見つめてから、話をさらに先に進めた。
「止められないほどに思いがあふれた源氏は、御息所に対して、和歌で応戦します。

少女子(おとめご)が あたりと思えば 榊葉の 香をなつかしみ とめてこそ折れ

 この神聖な榊の枝をあなたに捧げるのは、決して間違いなんかではありません。神にお仕えする方のいらっしゃるあたりに、あなたもいるだろうと思って、榊の香りをたよりに、ここにたどりついたのです。そんな思いを源氏は和歌に詠んだのです」と奈月は言い、榊の枝を持った手をゆっくりおろした。
「あの時、東山君がした話はだいたいそんな感じです。私はそれまでに『源氏物語』を少しかじっていましたし、六条御息所の話も何度も聞かされていましたから、すんなりと入ってきました。ただ、東山君は、私に向けて話してくれたようで、実は私を喜ばせようと思っていたわけではなかったのです。要は、彼の自己満足だったんです。長いことつきあっていれば、それくらいのことは分かります。でも、私は、それでよかった。彼のことが好きだったし、話を聞くことで彼の心が満足するのであれば、それはそれで立派な役割を果たしていると納得していましたから。だけど、あの日ばかりは違いました。私は、彼の話を聞きながら、ものすごく悲しくなったのです。もう少し言うと、なんで私がここにいなければならないのか、その意味すら分からなくなっていました」
 奈月はかすかに息を荒げながらそう話した。それでも、落ち着きは失われていない。目の前の女性が本当に奈月なのか、ますます疑わしく感じられるほどだ。
「そして私は、ふと気づきました。こんなにも悲しいのは、私の魂が勝手にさまよい始めてるからだと」
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Author:スリーアローズ
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