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キラキラ 234

 奈月はなおも境内の奥へと歩を進めた。苔むした地面から、おそらくは杉と思われる大木がまっすぐに突き出て、空に向かって伸びている。僕たちはそれをよけるように、ゆっくりと歩いた。緑の臭いが鮮烈に鼻をついてくる。
「頭では分かっていたんです。私は東山君のことが好きなんだって。私は彼と付き合ってるんだから、この人以外の人を好きになっちゃいけないとまで思っていました。でも、あの時ばかりは、魂がいうことを聞かなかった。そして、その魂がいったい何を求めてるのか、私にはよく分からなかったんです。私が自覚していたのは、ただ魂が体を離れてさまよい始めているということと、その状態は私にどうしようもない痛みをもたらしているということだけでした」
 木立の高いところから聞こえてくる鳥の声の種類が増えてきた。おそらくは小鳥だろうと思うが、突っつくようなさえずりが空へと抜けてゆく。夜明けが着々と近づいていることだけは感覚で分かる。
「六条御息所は皇太子の妻として、将来は皇后の地位を約束されていました。でも、皇太子は若くして亡くなってしまった。娘を1人残して。御息所は世間の『人笑へ』だけにはならないようにと、慎み深く生きていました。しかし、光源氏と出会ってしまった。それはもしかしたら、『宿世』として運命で定められていたのかもしれません。いずれにせよ、忘れかけていた彼女の恋心に再び火がついたのです。いいえ、それは、彼女にとっては、初めて知る本物の恋の味だったのかもしれません」
 奈月はひときわ大きな木の前で足を止めた。ここだけ空気がひんやりとしているように感じられる。
「光源氏は、御息所がこんなにも本気なのを知ることなく、彼女を抱くのです。女って、憧れていた男に抱かれてしまうと、もう、夢と現実の区別がつかなくなって、絶対に止められなくなるんです」
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Author:スリーアローズ
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