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キラキラ 236

 すると奈月は、「分かってます」とやさしさのこもった口調で言った。「なぜ今、私がこんな話をしてるのか、先輩はよく分からないのでしょう?」
 その問いかけに対して何も答えられぬまま、暗闇に立つ彼女の姿を見た瞬間、僕はどきっとした。目の前に立っているのは、奈月ではなかったからだ。見た目はたしかに奈月に違いない。だが、奈月のように見えて、実は奈月ではない。ここに立っているのは、孤独に震える1人の女性だ。
 思わず「奈月?」と声をかけた。だが彼女は、あたかも何かの象徴のようにそこに立ちすくんでいるだけだ。混乱している僕を気にかけるふうもなく、彼女は話を続けた。
「なぜこんな話をしているのか、実は私にもよく理解できないんですよ。でも、1つだけ確かなのは、今この瞬間、先輩とこの野宮にいるのは、『宿世』によって定められていたということです」
 木立の高いところで、また鳥が鳴いた。初めて聞く鳴き声だ。それは木管楽器のように野太く、高らかに響き渡った。
「私は、この野宮で先輩と2人きりになるように宿命づけられていたんです。今、はっきりと悟りました。今のこの瞬間は、きっと、永遠になります」
 彼女はそう言い、一途に僕の方を見た。暗闇の中でも、彼女の視線はまっすぐに伝わってきた。
「大切なことは、後になってみないと分からないんです。さっきから何度も出てくる、『思い通りにならないようで、実は思い通りになっているのが人生』っていう思想も、きっと同じことを言っているのだと思います」
「もし、奈月が言うように、今という時間が『宿世』によって決められていたのなら」と僕は口を挟んだ。「今のこの瞬間は、いったいどんな意味があるのだろう?」
 すると、奈月はふっと力を抜き、続きを話し始めた。 
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Author:スリーアローズ
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