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キラキラ 237

「ここは、ほんとうに神聖な場所です。自分の魂の声がはっきりと聞こえてくるようです。・・・私、場所には『力』があると思っています。たとえば、私は佐賀に生まれたわけですが、たまたまそれが佐賀だったというのではなくて、佐賀という場所が私をこの世に導いたのだって、これはずいぶん前からですけど、そんなことを感じてきました」
 そう言って奈月は目の前にそびえる杉を見上げた。まるで極楽浄土を仰ぐかのようだった。
「光源氏が須磨に流れたのにも、やっぱり須磨という土地自体に求心力があったのでしょう。それから、その後明石に移ったのも、これはもちろん、表向きには明石の入道をはじめとする人たちの導きもあったわけですが、根源的には明石という場所に力があったのです」
「独自の観点だな」と僕は言った。だがそう言った後で、何やら見当違いのことを口にしたような気がした。それを裏付けるかのごとく、奈月は僕に頓着することなく話を進めた。
「須磨から明石に移る時に、海が荒れて海竜王が出てきましたよね。あれは、住吉の神の導きによるものだと光源氏は感じ取るわけですが、神々でさえも、その土地に由来しているわけです」
 奈月は、見上げていた視線を今度は足下に向けた。左手には榊の枝を持っている。
「そう考えると、この野宮にも、力があるわけです。ここは六条御息所と光源氏との最後の場面になるべくしてなった、つまり、この場所が2人を引き寄せた」
 ということは、この場所が僕たちをも引き寄せたわけだ、という言葉が頭に浮かんだが、口には出さなかった。ひんやりとした空気の中、緑と土の臭いだけがかすかに漂っている。
「この野宮には、神聖な空気が感じられます。ここは、斎宮に選ばれた女性たちが、伊勢神宮に仕える前に禊ぎをする聖域。この空気は、人によって作られるようなものではない。だからこそ六条御息所は、源氏から離れるためにここに逃げ延びたのです。でも、源氏は追いかけてきた」
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