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キラキラ 241

「彼女たちは、もしかすると神を恨んだかもしれません。当時は『神仏習合』と言って、神と仏を調和して崇拝する風習はありましたが、それはあくまで俗社会での話であって、伊勢神宮に仕える人間は、仏を崇めることは固く禁じられていました。神は彼女たちに決して自由を与えなかったのです」
 奈月はそう言い、手に取った榊の枝を再び顔の前に掲げた。その瞬間、僕はまたどきっとした。榊の枝は彼女に驚くほどよく似合っていたのだ。彼女自身が神に仕える身であるかのようにさえ見えた。花柄の白いワンピースも、暗闇の中では、神聖な着物のように映る。
「つまり、完全であるということは完全ではない。完全であることによって誰かが自由を奪われ、傷つき、そこから恨みの感情さえ生まれるのです」と奈月は言った。
 僕は彼女の話の意味を、できるだけ具体的に理解できるように頭の中で咀嚼してみた。
「完全であるということは完全ではない」
 だがそれは、まるで論理学のゲームみたいに、不毛な調子で頭の中をぐるぐると回るだけだった。
 すると奈月は「もちろん、六条御息所と光源氏は、そんなことまで考えてはいません」と言ってきた。「久しぶりに再会した2人は、魂の赴くまま、本能の導くままに、この場所で結びついただけなのです。でも、『源氏物語』の読者である私は、この場所が2人を引き寄せ、タブーを犯させたと解釈します。そうして、この聖域が犯される場所となることにより、完全性を崩壊させ、その割れ目から、新たな意味の完全性が芽生えることになったのです」
「つまり、神は2人を許した、というわけだな」と僕は自分なりの解釈を述べた。だが奈月は僕の言葉が耳に入っていなかったかのように、すぐさま次の言葉を発した。
「でも、今日ここへ来てみて、ひとつ気づきました。六条御息所は、この聖域でスリルを感じた。そうして、神に背いてまでも、源氏ともっと特別な関係を結びたいと願ったのです」
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