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キラキラ 242

 奈月は「特別な関係」という部分を低く言ったような気がした。それが意図的かどうかは分からなかったし、ひょっとしたら僕の耳がそう聞いただけなのかもしれない。だが、その「特別な関係」という言葉は、僕の心の井戸の中にポチャリと音を立ててゆっくりと沈んでいった。
「六条御息所は、少なくとも源氏と出会うまでは、道徳的な枠の中にきちんとはまって生きてきました。身の程をわきまえ、世間体を気にし、余計な物思いに煩わされないようにと細心の注意を払っていました。でも、そういう人間であればあるほど、特に恋の窮地に立たされた時には、道徳の枠を超えようとしてしまうんだと思います」と奈月は続けた。「それほど恋は、おそろしい」
 彼女の全身からは、再び危険な空気が感じられ始めた。だが、さっきのように話の流れを変えたいとは思わなかった。ここまでくれば、目の前に立つ女性の話を最後まで聞かなければならないと思った。
「ということは、日頃はおちゃらけているような人は、恋をした時には案外道徳的だってこと?」と僕は聞いた。すると奈月は「あくまで一般論ですけどね」とだけ答えた。そうして、また話を再開した。
「六条御息所だけではなく、光源氏だって実は道徳を重んじる人たっだんですよ。何より彼は、父や先祖を大事にします。それから、周りの人間に、完璧とも言えるくらいに気配りができる人間だったんです。女性たちが彼に惹かれるのには、ちゃんとした理由があったわけです」
「光源氏には『性』と『癖』があった」という東山の話を奈月がしてくれたのを思い出す。普段は女性に見向きもしないが、いざ恋に落ちてしまうと何を捨ててでもそれを手に入れようとしてしまう。光源氏とはそういう男らしい。
「六条御息所は、この聖域にいながら、自分をきちんとわきまえていた。でも、だからこそ、彼女の魂は騒ぎだし、彼女を興奮させたのかもしれません。そうしてタブーを犯すことで、光源氏と特別な関係を結ぼうとした。神にさえ背くことによって、永遠の恋に溺れたかったのではないでしょうか」
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Author:スリーアローズ
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