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キラキラ 245

 その奈月の言葉は、知人が急死した時のような衝撃を僕に与えた。
「東山君のしおりにも書いてあったことですが、都に帰った光源氏と離ればなれになった明石の君が、姫君を抱いて住吉神社に行った話をしましたよね。そこで彼女は、偶然にも光源氏の壮大な行列を目の当たりにして、あまりの身分の差に深く傷つきました。従者からその話を聞かされた源氏も、自分のことで苦しんでいる明石の君を思うと胸が詰まりました。でも、お互いに苦しみを共有したことが、源氏と明石の君を引き寄せたわけです。六条御息所が亡くなったのは、その直後でした」と奈月は言った。
 源氏物語は消滅と再生の物語でもあると奈月は昨日言っていた。六条御息所が物語から消滅してゆくのと引き替えに、異境の地で出会った明石の君が源氏に愛されるようになる。つまり、六条御息所の消滅は、皮肉にも明石の君の再生をもたらしたというわけだ。
「作者である紫式部は、なぜ六条御息所にそんな運命を与えたのでしょう。単に、物語をおもしろくするため? いや、それだけじゃないと思うのです。六条御息所という女性の心は、すごく生々しく描かれています。そういう意味で、この女性は、『源氏物語』の中でもまれな存在だって、東山君は何度もそう言っていました」
 さっきまでのナレーターのような口調とはうって変わり、奈月は自分の声で語り始めている。
「六条御息所の魂は、誰もがもっているのだと思います。当然紫式部の中にもあっただろうし、私の中にもあります。六条御息所は作り上げられた人物かもしれませんが、彼女の中に宿る魂は、決して作り物なんかじゃないのです」と奈月は静かに語気を強めた。
「そして、その魂は、悲しい運命に遭って、最後には消滅してしまう。でも、それも、六条御息所だけの話じゃないと私は思うのです」
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