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キラキラ 246

「つまり、奈月の魂も、消滅してしまったと?」と僕は訊いた。無意識のうちに出てきた言葉だが、決して軽はずみというわけでもなかった。
 奈月は僕の質問にも動揺することなく、それでもつばを1つ飲み込んで、こう応えた。
「昨日から先輩は、『思い通りにならないようで、思い通りになっているのが人生』って、何度も言ってます。『源氏物語』の中の人物も、藤壺も、紫の上も、明石の君も、光源氏を愛した女性たちは、その恋の苦しみに翻弄されながらも、最後にはそれぞれの人生にたどり着いてるように見えます。だから、先輩の言葉は、あながち間違いでもないのだろうと思えます。ただ、私の場合、どうしてもそんなふうにうまく割り切ることができないんです。このまま私の魂は消滅してゆくんじゃないかって、本気で恐ろしくなることが多々あるんです」と奈月は声を震わせた。
 実は僕は少し安心していた。暗闇に立つ目の前の女性は少しずつ体温を取り戻し、僕のよく知っている奈月の姿になってきたように感じるのだ。そういうこともあって、僕は「大丈夫だ」と声をかけた。「奈月の魂は消滅なんかしないから」
 すると彼女はふと僕の言葉に耳を傾け、「何が大丈夫なんですか?」と聞いてきた。
「奈月は今生きている。まだ若い奈月は、もちろんこれからも生き続ける。生きる以上、魂は消えないよ。消えるわけがない」
 僕がそう答えた後、彼女の全身から力がふっと抜けたのがうかがえた。
「先輩には、私のことなんか、絶対に分からないんです」
 僕にとっては、全く意外な返答だった。やはりこの女性は奈月ではないのだろうか?
「これまでは、どうせ分かってもらえないって、投げやりになっていました。でも、いつの間にか時間は確実に過ぎて、私もいろんなことを真剣に考えなければならなくなってきました。私には時間がありません。このまま終わりたくないんです」と奈月は声を振り絞った。
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