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キラキラ 249

 奈月は表立った反応を何一つ見せず、「どうぞ」とやさしく語尾を上げた。僕は勢いにまかせて話した。
「まず1つめの質問だ。今僕は、すごく驚いたんだ。というのも、六条御息所の言葉をよくそんなにも覚えているなって、感心したというか、不思議に思ったよ。だって昨日までの奈月なら、『源氏物語』の話をするのに、東山のしおりを見なけりゃならなかった。おまけに、今の朗読ときたら、完全に板についてた。まるで奈月の思いをそのまま言ったというふうに聞こえた。それはいったい、どうしてだろう?」
 すると奈月は、やはり目に見える動きをしなかったが、それでも何かを考え込んでいるふうでもであった。そうして、しばらくしてから、「で、もう1つの質問は、何ですか?」と聞いてきた。
 意外な切り返しに一瞬穿たれたが、すぐに僕は、自分が今何を聞きたかったのかを思い出しにかかった。言葉は口をついて出てきた。「さっきからずっと不可解に思うことがあるんだ」
 奈月は、いかにも穏やかな口調で、「何ですか?」と返してきた。
「さっき、ホテルで目が覚めた時、奈月は別人のように冷たくなって、しかもいきなり佐賀に帰ると言い始めた。昨日の夜、僕たちは一緒に寝て、裸のまま抱き合ったんだよ。覚えてるよね?」
 僕の問いに、奈月はゆっくりと首を縦に振った。その反応は僕を安心させた。昨夜の布団の上の出来事も、「きわめて現実的な夢だった」ともし奈月に跳ね返されたら、今の僕にとってそれ以上寂しいことはないと怖れたからだ。安心した僕は、次に出すべき自分の言葉を慎重に選んで、こう言った。
「わけも分からずに冷たくなった奈月だったけど、どうしても僕と一緒に行きたいところがあると言って、ここに来たんだ。おまけにまだこの時間だ。夜も明けてない。これって、一般的なものの見方からすると、明らかに不自然だと思うんだけど」
 奈月は僕の話をちゃんと聞いてくれている。
「いったい、奈月は、ここで何をしようと考えてるんだろう?」
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Author:スリーアローズ
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