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キラキラ 260

 奈月はそう言い、空の低いところを見上げた。それにしても、夜は明けそうで明けない。夜も奈月の話に聞き入っているかのようだ。僕にとって、これまでで一番長い夜になるだろう。
「私は、なるべく麻理子さんに近づかないようにしました。麻理子さんの姿を見るだけで、怖くって、動悸がしたんです。それから、先輩ともなるべく距離を置こうって自分に言い聞かせました」
 奈月の話を聞きながら「俺って、本当に何も分かってなかったんだな」とつぶやいた。暗闇の中の奈月はこっちに視線を向けたが、僕の言葉に対しては何も返してはこなかった。
「でも、先輩と会わないっていうのは、すごく難しかったですよ。私の大学生活は先輩との接点だらけでしたからね。私はすごくつらかったんです。研究室の中にいながら、できるだけ先輩の方を見ないようにしても、かえって逆効果でした。何にも知らない先輩は、やさしく声をかけてくれたし。そのうち、私はあきらめました。先輩の方を見ないっていうのは無理だって。
 で、そうやって開き直ると、今度は麻理子さんのことを忘れ始めたんです。人間って、面白いですね。目の前にすごく嫌なこととすごく好きなことが2つある時、好きなことの方を考えてしまうんです。人間の頭って、同時に2つ以上のことを考えることができないって、その時知りました。これって、私だけですかね?」
 奈月はそう問いかけてきた。僕はそれについて少し考えてから、「いいや、奈月だけじゃないと思うよ」と答えた。つまり表現を変えると、「人間は目の前の欲望には勝てない」っていうことだと胸の内で言ったが、それは口に出さずにいた。
「そんなこんなで、私は麻理子さんから逃げることによって、普通の生活を取り戻すことができたんです。まあ、アパートに帰れば東山君もいたんで、いい気分転換にもなりましたし。でも、そんな私の生活が、根底からズタズタに切り裂かれる出来事が起こったんです。麻理子さんからの仕打ちでした」
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Author:スリーアローズ
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