スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

キラキラ 262

「それで、東山は、いったいどんなことを言ったんだろう?」
 僕がそう聞いた途端、奈月は声を噛み殺すようにむせび泣いた。境内を吹き抜ける風は僕の前髪を揺らし、同時に緑の鮮烈な香りを運んできた。これ以上奈月の話を待つのは酷かもしれないと思い始めたとき、彼女は鳴き声の中から、訥々と言葉を紡ぎ始めた。
「見えないところで、私と先輩は付き合っているって、麻理子さんは言ったらしいのです」
「それはまた、見え透いたでっちあげだな」と僕はすぐに返した。心の中は十分に落ち着いている。
「私たちは、もう、かなりの仲で、研究室の中でも皆から承認されていると」と奈月は続けた。僕は「それで、東山は、そのたわごとを信じたのかな?」と素朴な疑問を投げかけた。
「もちろん、信じなかったと思いますよ。ちょうどそれは、前回みんなでここに旅行した直後のことだったんで、旅行中、私と東山君は、ずっと一緒にいたじゃないですか。で、先輩の方は、ホテルに入った後はけっこう自由に動かれてたので、あやしいことはなにもなかったですよ」
「じゃあ、いいじゃないか、麻理子が何と言おうと、まともに相手にするまでもない」
 僕がそう言うと、奈月は声のトーンを落としてこう続けた。
「でも、麻理子さんはその後も、東山君に畳み掛けたんです。あることないことを、時にはものすごく切なそうな顔をして、彼に話したようなのです。2人で秘密のメールを交わしているとか、先輩が毎日つけている日記をこっそり読んでいるとか、私と先輩のツーショットの写真を見せたりしたんです」
「そんな写真あったかな?」
「私たちの写真、けっこうありますよ。しかも撮影したのは麻理子さんなんです」
 僕の心は依然として落ち着いている。麻理子の作り話に心を乱されることはなかった。だが、次の話を聞いた瞬間、僕の心は瞬く間に凍てついた。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

作者

スリーアローズ

Author:スリーアローズ
*** 
旅に出ましょう
それも
とびっきり寂しい旅に・・・

最新の文章
リンク
みなさまの声
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
目次
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。