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キラキラ 263

「東山君じゃなくても、麻理子さんみたいな人に本気で話をされたら、それが本当なんだと信じ込んでしまいますよ。それに・・・」
 奈月はそこまで言った後で、微細な咳払いをした。
「それに?」と僕は彼女の次なる言葉をせかした。
「それに、だまされてるのは東山君だけじゃなくて、麻理子さんも、それから私もなんだって言ったらしいんです」
 僕は「どういうことだ?」と聞いた。声が喉にぴったりと貼りついたようだった。
「これは、正直話しにくいことなんですが、でも、すでに時効がきてるので問題ないですよね」と奈月は前置きとも断りともとれる言葉を挟んでから、「麻理子さんが言うことには、先輩にはじつは他にも付き合ってる人がいるっていうことなんです。何でも、私たちよりもずっと年上で、ずいぶんとお金持ちの方で、しかもその人には夫も子供もいるって言うんです」と打ち明けた。
 その話を聞いた僕は、今度は空気の塊が胸を塞いだようだった。呼吸はたちまち苦しくなり、心拍が胸の皮膚を押し上げるのが感じ取られた。
「先輩、大丈夫ですか?」と奈月は言った。ついさっきまでの冷淡な彼女とはまるで別人の、思いやりのある奈月に戻っている。おそらく今なら1人で勝手に佐賀に帰るとは言わないだろう。だが僕にはそんな質問をするような心のゆとりなど、あるはずがなかった。
「もちろん、私は、そんなこと信じなかったです。でも、東山君にはリアルに聞こえたみたいで、彼は嘘だとは思えなかったんです。だから彼は、私が先輩と付き合っているっていうこともきっと嘘じゃないんだろうって捉えたんです」
 そう言われれば、旅行が終わってから、東山とはあまり話をしていないような気もする。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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