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キラキラ 264

 だが僕にはあの頃の東山の態度を詳しく思い出すゆとりさえない。麻理子が僕と幸恵の関係を知っていたという事実が、目の前に立ちはだかる巨大な氷山を見上げる時のような絶望感をもたらしていた。
「もちろん、作り話ですよね?」と奈月は気を遣った言い方をした。僕は「もちろんだ」と平静を装って答えはしたものの、その後でどうしようもなく惨めな気持ちに襲われた。
 そんな僕を前に「麻理子さん、ひどすぎます」と奈月は声をさらに落とした。「あの人は私を先輩から引き離しただけじゃなく、東山君さえも巻き込んだんです」
 もはや僕は何も返すことができない。
「話は戻るんですが、その夜東山君は、麻理子さんからの話を打ち明けた後で、急に狂ったみたいになって、私に殴りかかってきたんです。もう、私、びっくりして、怖くて、声も出なかった。そうやってうずくまってるところに、今度は上から踏んづけてきました。サッカーやってた人が、女の子を蹴っちゃだめでしょ。もうこの人とは付き合えないって、本気で思いました」と奈月は涙ながらに訴えた。
 まさか、2人の間にそんなことがあっただなんて、想像すらしなかった。しかも、すべての発端はどうやら僕にあるらしい。僕は苔の大地に両手をついて、謝りたい衝動に駆られた。
「でも、その後で、東山君は急に素に戻って、体を丸めて倒れ込んでいる私を抱きかかえてきたんです。そうして、今度は、全く別の人格が宿ったみたいにやさしくなって、『大丈夫か、本当に悪かった』って、泣くんです。もう、私は訳が分からなくなりました。だけど、それからというもの、マイペースだった東山君は私のことを気にかけてくれるようになったのです。あの日さんざん殴りつけられたことがまるで夢だったんじゃないかって思うくらいの変わりようでした」と奈月は言った。もう、涙をすする音は聞こえない。
 依然として僕は、何をどうすればいいのか分からないでいる。
「だけど、そんなことをされても、私の心は何ひとつとして癒されませんでした」
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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