スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

キラキラ 267

 あぁ、これで僕と奈月の仲も終わりだな、と僕は悟った気がした。僕は何も知らないまま麻理子や奈月と過ごしてきたのだ。そうしてその途上において、たくさんの大切なものを見落としてきたのだ。もはや奈月に合わせる顔などない。
 これまで僕は何度も絶望感にさいなまれてきた。恋のこともそうだし、仕事のことも、それから今後の生き方のことも、考えれば考えるほど迷宮にはまり込み、逃げ場のない人生という強風に背中を押されながら、どこかへたどり着くしかないのだというあきらめの中に自らを投じてきた。なおかつ、それらの苦しみを僕独自のものだととらえることで、ささやかな慰めを得てきた。
 だが、奈月の口から真実を聞いた時、僕は自分という立方体の狭い部屋に閉じこもっていただけだったということを思い知った。そして、自らの悩みにとらわれるあまり、身近な存在だった奈月の苦しみにすら気づかなかった。
「でも、人間って、そんなものなのよ」
 突然声が聞こえた。他でもない幸恵の声だった。いつだったか、幸恵は、彼女の運転する赤いBMWのセダンの中でそう言った。
「どうしてあの人はやさしくないんだろうって、心底がっかりすることってあるでしょ? でも、それって、その人がやさしくないというわけじゃないと私は思うの」
 幸恵は2人きりになると、よくそんなたぐいの話をしてきた。
「もちろん、やさしさを完全に忘れてしまった人間もいるわ。でも、私たちは、そんな人にははなからやさしさなんて期待しないでしょ。がっかりさせられるのは、やさしさを期待できる人に裏切られた時よね。じゃあ、どうしてその人がやさしくしてくれないのかっていうことなんだけど、その理由は意外と簡単なの。その人に、他の人にやさしくするだけのゆとりがないのよ。つまり、自分のことで精一杯なのよ。そして、それが人間っていうものなんだって、私は思うわ」
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

作者

スリーアローズ

Author:スリーアローズ
*** 
旅に出ましょう
それも
とびっきり寂しい旅に・・・

最新の文章
リンク
みなさまの声
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
目次
月別アーカイブ
検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。