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キラキラ 269

「俺はやさしくなんかないよ」と思わず言葉がこぼれた。奈月は「やさしいですよ、先輩は」と繰り返した。今の僕の言葉と同じくらいに実感の重みのある言葉だった。僕は、これ以上何も説明する必要はなかろうと思った。真実を知らない方が幸せなこともある。むしろ、何でも言葉を尽くして説明すればいいというわけでもない。
 すると奈月は「えっと、さっきどこまで話しましたっけ?」と言った。僕もすぐには思い出せなかった。すると彼女は「前回、東山君と2人でここへ来た時のことでしたね」と小さく言った。
 僕は、内心、これ以上奈月の話を聞くのが怖かった。彼女がまだ何か、重大な秘密を隠しているのではないか、もちろんそこには僕も絡んでいる、それを聞くのが怖かったのだ。奈月がこの長い話をし始めたそもそものきっかけは、僕がした2つの質問だった。1つめは、なぜ奈月は六条御息所の言葉をまるで自分のもののようにはっきりと覚えているのか、それから2つめは、奈月はこの野宮に来て何をしようとしているのか。奈月は、2つの質問を個別に答えるのではなく、彼女自身の方法で答えたいと言ったが、今の話は、僕の質問が踏まえられているのだろうか?
 そんなことを考えていると、奈月は「前に東山君とここへ来た時、私は胸が塞がるように苦しかったんです」と深刻な声色で話し始めた。「先輩が私からどんどん離れていくようで、それがすごく怖かったんです。その頃、毎晩のように、先輩と麻理子さんが楽しそうに夜を過ごしている光景を想像しました。東山君はそんな私を見て、ますます機嫌を悪くしました。たしかに私はあの人のことが好きでした。でもその思いは、あの人が私に手を上げて以来、脆いものだったんだと気づいていました。私はただ、東山君が逆上しないように、偽っていただけです。あの日、竹林の道を歩きながら、頭の中は先輩のことでいっぱいでした。そうして、私から先輩を引き離して優越感に浸っているであろう麻理子さんを殺してやりたいと思っていました」
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Author:スリーアローズ
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