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キラキラ 270

 奈月は急に声色を変えた。呪われたような、おそろしい声だった。本能的に背筋をのけ反らすほどだった。奈月は、僕の方にまっすぐな視線を向けている。さっきまでの、別の魂の宿った奈月に逆戻りしてしまったかのようだ。
 すると奈月は、今度はうって変わって、甘くやさしい声で「先輩」と話しかけてきた。僕は返事すらできなかった。
「ずっと、待ってたんですからね」
 その言い方は、親しげだった。
「私は麻理子さんに、身も心もボロボロにされてしまったんです。苦しさで胸が引き裂かれそうになった時、私の隣にいたのは東山君でした。あの人は、なぜ私が寂しそうにしているのか、その理由を知っていました。すべては麻理子さんの思惑通りでした。東山君は、きっと私よりも、もっと傷ついていたことでしょう。とにかくもう、めちゃくちゃだった」
 過去のことを話しているはずなのに、あたかも現在の苦悩を語っているのかのように聞こえる。
「だから私は待つことしかできなったんです」
 その時、僕の心の知らない部分で、何かがぐらりと動き始めたような感覚があった。たった今感じた目の前の女性に対するおそろしさが、少しずつ形を変えているような気がする。危ない、と僕は心の中で声を出した。でも、その感覚は、まるで砂にしみこむ海水のように、じわじわと確実に勢力を広めていった。
「問題を解決する方法は、たった1つだけありました。だから私は、そうなるのをひたすら待っていたんです。長かった・・・」
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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