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キラキラ 274

 つまりあの頃の僕は、全くの固定観念の中で生きていたわけだ。しかも、そのことによって、気づかぬうちにいろんな人たちを困らせていた。しかも、僕にとっては身近で大切な人たちを。
「先輩とは決して結ばれないっていうことも、『宿世』だったのかなって、考えたりもしました」と奈月はむしろ明るく言ってのけた。
 思わずため息をついた時、「自分を責めすぎちゃだめよ。人は常に『状況』の真ん中に立たされてるんだから、失敗もあるわ。誰も自分のことで精一杯なのよ」という幸恵の声が横切った。それは幾分かの慰めにはなったが、根本から励ましてはくれなかった。幸恵の口から発せられた言葉だからだ。
 とにかくこれ以上奈月の話を聞くのがうとましくなってきた。自分の愚かさをますます思い知るだけなのは分かりきっている。とはいえ、さっきから僕の深いところを揺さぶっているある感覚がこの場所にとどまらせている。僕はここで奈月の話を最後まで聞かなければならないのだ。それこそ『宿世』によって定められているのだ。そんな、声にならない声が聞こえてくる。
 僕の心の半分以上を知らない奈月は、穏やかな口調で、回想を再開した。 
「私が佐賀に帰るために荷物の整理を始めた頃、大学の授業で使ったファイルの中から東山君が作った旅行のしおりが出てきたんです。なんだか、それが偶然には思えなくて、毎晩寝る前に読むようになりました。みんなで行った旅行が思い出されて、すごく懐かしかった」
 わけもなく、もう1度ため息が出てきた。奈月には僕のため息の理由など分かるはずもない。当時の僕が奈月の苦悩に気づかなかったのと同じことだ。因果応報ともいえるかもしれない。
「しおりを読みながら、旅行の一コマ一コマが鮮やかによみがえってきたんですけど、ずっと先輩と一緒だったっていうことが、夢のようでしたね。あの頃はまだ麻理子さんからのプレッシャーもなかったし。私の大学時代の、最高の時間だったんです。永遠っていうか」
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