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キラキラ 277

 榊の葉に目を落としながら奈月がそう言った瞬間、僕はまた、わけもなく、危ない、と感じた。
 昨日の夜から、奈月はさまざまな人格を、ローテーションするかのように入れ替えている。いや、それは彼女の意図的な仕業ではなく、きっと瞬間瞬間にさまざまな感情が入り込んでくるのだろう。少なくとも僕にはそう見えてしまう。
 すると奈月は「でも、」といきなり声を小さくした。そうして、その後で、唾を呑み込み、こう言った。
「六条御息所にとって、一番の想い出は、光源氏に抱かれたことでした」
 さっきから僕を深いところで揺さぶっているある感覚が、あたかも電流でも走ったかのごとく、びくりと震えた。その直後に背筋を寒気が駆け上がった。
「六条御息所はその思いを決して表には出さなかった。大人の女って、自分の心の一番深いところにある感情は絶対に表には出さないもの。といっても、特別な場合もあるんです。心の一番深いところで彼女を悩ませる、その秘密の張本人にだけ、それとなく打ち明けるのです。直接打ち明けることもあれば、間接的な場合もある。麻理子さんみたいに、それをうまく使い分けて打ち明ける人だっている」
 そう言って奈月は、榊を持つ手にぐっと力を込めた。
「秘密の感情を打ち明けるということは、呼吸をすると同じようなこと。ずっと心にしまっておくことなんてできないんです。吐き出さないと、死んでしまう」
 僕の根底を揺さぶり続けている感覚が、僕に軽い眩暈を引き起こさせた。何度かまばたきをして瞳を凝らすと、目の前の女性が再び奈月には見えなくなっている。だが、これまでとは違って、おぼろげながらに、誰なのかが分かりそうな気がする。いや、特定の誰かではないのかもしれない。奈月のように見えるこの女性は、奈月であり、麻理子であり、あるいは幸恵でもあった。もしかしたら、さっきから彼女が申告している通り、六条御息所なのかもしれない。
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