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キラキラ 278

「伊勢に下った六条御息所が一番つらかったのは、夜でした。平安朝の女性にとって、夜とは好きな男の人と会える限られた時間だったんです。まだ源氏が訪ねてきてくれた頃、月の夜は、特に燃えた。初めて源氏を受け容れてからというもの、御息所は彼がほしくて仕方なかった。彼は、肉体的にも、すべてを包み込んでくれる唯一の男だったんです」
 奈月は溢れ出る感情を抑えようとしているかのように話した。
「平安朝の男って、『にほひ』とか『けはひ』とか、はっきりとは目に見えない雰囲気にこそ魅力があったとされます。でも、月明かりに映し出された光源氏の裸ほど、六条御息所の心を満たすものはなかった。彼女はずっと、自室にいる時も、それから宮中に上がっている時も、光源氏の裸を思い浮かべました。そうして、光源氏が彼女の中に入った瞬間の、すべてを揺さぶられるようなあの恍惚がどうしても忘れられなかったんです」
 奈月は呼吸が早くなってきたようだ。それでもつとめて冷静に、自分の言葉を丁寧にかつ的確に紡ぎ出すかのように語りを続けた。僕は奈月の話に思わず惹きつけられていることを自覚した。
「恋人に対して心からの愛を求めるのは当たり前のことです。でも、時に、心は身体にかなわないこともある。身体でしか癒すことのできない心があるんです」と奈月は声を荒げた。
「だのに、そのうち光源氏は葵の上という有力者の娘と結婚し、義母である藤壺を愛し始めたという噂が宮中でささやかれるようになりました。そして、それがただの噂ではないことを裏付けるかのように、彼はぱったりと訪ねてこなくなりました。かくして六条御息所は、1人ぼっちの夜を過ごすことになったのです。特に月夜はつらかった。彼女を抱く光源氏の幻影に苦しめられる毎日が続きました。彼女は毎晩御簾の内側に身を隠して、自分で自分を慰めるしかなかったのです」
 奈月はそこまで言った時、小さくため息をついた
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