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キラキラ 279

「そんな中、六条御息所は、車争いの日に、葵の上側の人たちから屈辱を受けます。大衆の面前で、光源氏への叶わない愛に苦しむ姿をさらしてしまった。彼女が最も怖れた『人笑へ』になってしまったのです。思い通りにならないようで、思い通りになっているのが人生って、昨日から何度も言っているけど、最も避けたい事態に陥ってしまうのもまた人生なんですね」
 奈月はまるで自分の痛みのようにしみじみと語った。
 そういえば、たしか麻理子も同じようなことを言っていた。物事に執着することは怖い、と。
 奈月から真相を聞かされた今、その言葉は僕に向けられたものだったのかもしれないと思う。大人の女性は心の一番深いところで自分を悩ませる張本人にだけ秘密を打ち明けるもの。直接的に伝えることもあるし、間接的な時もある。
 そんなことを考えていると、奈月が、いきなりこんなことを言ってきた。
「物事に執着することは、怖いです」
 その言葉を聞いて、僕は再び眩暈に襲われた。しばらくしてそれが収まった後、今度は背筋がぞっとした。
「執着することは、いろんな意味で怖いんです」と奈月は小さな声で追い打ちをかけるように続けた。
「屈辱を受けた六条御息所の魂は『あくがる』状態になって、ついに葵の上を呪い殺します。もちろん、そのことによって御息所自身もひどく苦しみました。彼女は何度も『憂し』と言っています。東山君が言うとおり、六条御息所はただの悪女として切り捨てられないんです。苦しい恋に落ちた女性なら誰でも体感する宿命を背負っただけなんです。でも当の本人は、そう考えることはできなかった。伊勢に下るしかなかったのはそのためです。とにかく彼女は、光源氏のことを思い続けた。光源氏の何を? そうです。彼の身体を想像したんです」
 僕の心の深いところでまた、危ない、という声が雷鳴のように上がった。
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Author:スリーアローズ
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