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キラキラ 281

 その時、さっきの奈月の言葉が僕の脳裏を鋭く横切った。
 犯される場所・・・
 この野宮は六条御息所と光源氏の2人によって「犯される場所」となった。神にさえ背くことによって手に入れる愛もある。逆に、神は犯されることによってより完全性を身にまとうことができる。 
 奈月がそんなことを語ったのはほんの数十分前のことだ。だが僕にはそれが信じられない。ここに来てからの時間が、とてつもなく長く感じられるのだ。
「伊勢に下ってもなお、御息所には、この野宮の光景が焼きついていました。彼女は光源氏に抱かれながら、とめどなく濡れて、大きな声を出した。その恍惚感は身体から離れることはなく、その時の声はいつまでも耳の奥に残っていました。この聖域におけるすべての経験が彼女の永遠になっていたのです」と奈月は、僕が今思ったことを補足するかのようにそう言った。ここで話が一段落ついたと見える奈月は、呼吸すらしていないかのように、静止している。地表を這うわずかばかりの風が、杉の木立の間へと静かに吸い込まれていく。
「今日、先輩と一緒にここに来たのが『宿世』なら、私は何も思い残したくはない」と奈月はつぶやいた。そうして、そのままの口調でこう言った。「六条御息所は光源氏とこの場所で出会うのを心待ちにしていた。それと同じように、私も先輩とここで会うのを楽しみにしてたんです」
 僕の中でまた、危ない、という声が聞こえた。その後で、地殻変動の前触れであるかのように、何かがゴトゴトと音を立て始めた。僕にとって奈月は大切な後輩だ。僕の人格を形成したとさえ言える大学時代を思い返す時、決して欠くことのできない存在なのだ。彼女を失ってはいけない。僕は金縛りから逃れるかのように自分に言い聞かせた。だが、そう思えば思うほど、身体は反対の方向に動こうとする。
「六条御息所は、毎晩濡れていた・・・」と奈月は言い、僕の方に歩み寄ってきた。
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スリーアローズ

Author:スリーアローズ
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