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キラキラ 284

 僕が自分の心の中をさまよっているところに、奈月はもう一度、和歌の後半部分を口にした。

もしほたるてふ 須磨の浦にて

「東山君が電車の中で熱く語っていたとおり、須磨は古くから塩の産地だったんです。ワカメなどの海藻を浜に上げて、それを焼いて水分を蒸発させてから塩を取り出したようです。『もしほたるてふ』っていうのは、海人の身体や彼女たちが浜辺に引き上げた海藻から『藻塩』が『垂れる』ということを表していました」と奈月は昨日話したことを丁寧におさらいした。
 明石から須磨へと向かう電車の中で、窓の外を見ながら東山が話していた光景が、磯の風情とともに鮮やかに甦ってくる。途中、塩屋という駅もあった。そこでは浮き輪を持った海水浴客や、釣り竿を持った親子が駅の薄暗い構内を歩いていた。たしかに潮の香りは今でも十分に感じられた。
「そもそも、光源氏が流離した頃から、須磨には『藻塩垂る』という言葉がセットで思い浮かべられていたんです。東山君のしおりにもずいぶんと強調して書かれてありましたよね。在原行平という歌人が詠んだ和歌が、あまりに有名だったんです。

わくらばに 問ふ人あらば 須磨の浦に 藻塩垂れつつ 侘ぶとこたえよ

 誰か人が来たら、私は今、藻塩が垂れる須磨の浦で、侘びしく暮らしていると答えてくださいっていう意味です。伊勢の六条御息所が、須磨に流れた光源氏に詠んだ和歌にも、当然この和歌が意識されていたわけです。そうして御息所は、誰でも知っていたその和歌の中に、特別な秘密を読み込んだんです」
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