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キラキラ 285

 奈月は僕のすぐ目の前にいる。そうして、胸元に榊の枝を大事に持っている。彼女こそ、神に仕える斎宮という女性を想像させる。白を基調とした花柄のワンピースも、暗闇の中には、装束にさえ見える。
「六条御息所の心にあったのは、光源氏との思い出であり、彼の身体でした。特に、最後にこの野宮で抱き合った時の記憶は鮮明に刻み込まれていました。境内の一角にあった彼女の寝所で裸になった時の光景。月明かりに浮かび上がる光源氏の身体に見下ろされながら、御息所は恍惚感に身を悶えました。そうして、これまでにないくらいに濡れました。必死に声を押し殺そうともしましたが、おそらく、禊を行っている他の女性たちにもばれていたでしょう。光源氏に憧れ、彼を待ち続けた1年と半年の思いがすべて昇華されるかのような夜を彼女は過ごしたのです」と奈月は言った。
 潮の香りが風に運ばれて遠ざかってゆくのを感じる。それと入れ替わるかのように、奈月の存在がゆっくりと近づいてくるように思う。危ない、という声が再び聞こえる。だが僕はどうすることもできない。自分の心と体が少しずつ離れてゆくのを、あきらめの気持ちで傍観することしかできない。
「伊勢に下ってもなお、光源氏の身体は六条御息所の心から消えることはなかった。むしろ、時間とともに強く濃くなってゆくようでした。でも彼女は、完全に絶望していたわけではありません。野宮で結ばれたことにより、手紙のやり取りができるようになっていたからです。彼女は伊勢から光源氏に手紙を出した。それは、自分の苦悩を打ち明ける唯一の場でもありました。そうして彼女は、手紙の中で和歌を詠んだ。

うきめ刈る 伊勢をの海人(あま)を 思ひやれ もしほたるてふ 須磨の浦にて

 六条御息所の一番深いメッセージは、この歌の中にそれとなくつづられたのです」
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