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キラキラ 293

「なんだか、哀しくなってくるな」と僕は、今の心の中を言葉にした。学生時代の奈月なら、間違いなく、哀しげな僕に同情の声を掛けてくれたはずだ。だが、今の彼女ときたら、すべてを悟ったような顔をして、ただこっちを見ているだけだ。まるで、僕の眉間に開いた穴から、野宮神社の建物を眺めているかのようにさえ見える。
 昨日の夕方、バスで嵐山を通る時、奈月は「過去を受け入れたり諦めたりすることができないから苦しい」と述懐していた。だが、今そう感じているのは、僕の方だ。奈月の言うように、これから起こることは宿世で定められているのだと諦めて、過去に積み上げてきた奈月との関係を壊してしまうことが僕にはできない。
 それで僕は「君が奈月だとは思えない」とつぶやいた。
 すると彼女は「私が誰なのかというのは、大した問題じゃないです」と、さらに予期せぬ返答をしてきた。それから、僕に何かを考えさせる間すら与えずに、キスをしてきた。僕の頭の中には、今の奈月の言葉が居続けた。
「私が誰であるかは大した問題じゃない」
 キスをしながら、頭の中で絡み合った糸が再びもつれだしたのを感じていると、奈月はやおらしゃがみ込み、今度は僕の性器を口に包み込んだ。それは、ほんとうにすばらしい愛撫だった。さっきとは、また違った意味合いが込められているかのようだった。奈月が本気になるにつれ、僕の脳は瞬く間に溶け始め、すべてが快楽に満たされた。この世に天国があるとすれば、まさに今がそうなのだと納得させられるほどの、完璧な快楽だった。 
 僕は無意識のうちに奈月の頭に両手をあてがい、空に向かって声を上げた。そのうちその声は、危ない、と言っているようにも聞き取れた。だからといって僕にはどうすることもできない。快楽に、ただ心身をうずめることしかできない。
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Author:スリーアローズ
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